ブッククラブニュース
平成20年5月分

環境が決める?!

 GWはどこかにお出かけになりましたか? ゆめやは久々の四連休でしたが、年度初めの仕事が残っていて、半分は仕事、半分は庭の手入れや農作業で終わりました。今年は、桜が咲いているうちに花ミズキが咲き、いつもなら連休中は咲き誇るパンジーがまったくダメ。花ミズキも古木ではないのに一本が枯れ、いつもなら五月末に芽が出るヒマワリがもうかなり背丈を伸ばしています。いよいよ温暖化が目に見えるようになったのかもしれません。この調子だと夏はかなりの高温になり、40度を越す都市も多くなるかも。
 さて、GW中、遠方の会員の方が数家族ゆめやを訪れました。日頃、お会いしていない方々の訪問はうれしいです。わざわざ、こんな田舎の小さな店を訪ねてくれるありがたさ。お子さんが小学生の方がほとんどでしたが、考えてみれば長いおつきあいにもかかわらず、実際にお話したり、お子さんと遊んだりすることはなかったわけです。そこで、私が感じたのは、お世辞でも何でもなく、「ああ、やっぱり読み聞かせや読書をしている家庭はちがうんだなあ!」でした。これは、来店の方々のお子さんたちを見ていても思うことなのですが、きっと色々なものを体験させたり、見せたりしているのでしょう。
私が、お子さんの様子を褒めると、お母さまやお父さま方は「これもゆめやさんの本のお蔭です」なんて返します。これではお世辞の言い合いですが、でも「ほんとうにこういう親に育てられる子は幸せだなぁ。」と思うのですよ。
世間一般のスーパーやデパートで見かける子どもたちはちょっと違います。いろいろは言いませんが、まぁ、皆さんもご承知のようにひどいものがあります。
絵本の読み聞かせの効力などわずかなもので、実際に子どもたちの心や行動に影響を与えるのは、親であり、家庭であり、その周辺の環境です。それを与えてくれる親に恵まれるか恵まれないかで子どもの未来はかなり変わってしまうのではないでしょうか。「半面教師」などは確率的にわずかにしか出ない結果で、だからこそ、その言葉が生まれたのでしょう。親を見ていると子どもが見えますし、子どもを見ていると親も見えます。多くは、すべて「見かけ」通り。「人は見かけによらない」という言葉も確率的にわずかだからこそ、生まれたのでしょう。周囲に見守られているという感覚もなく育ってしまう子も出てきています。そういう子たちの行動や思考は、これまた、それなりになって行くものです。  私は、よく来店するお子さんにくだらない話をしたり、大嘘を話すのですが、子どもたちは目を輝かせて聞いてくれます。人に対応する力・・・これもまた家庭環境の良さが現われている証拠なのでしょう。好奇心ばかりでなく自己抑制力も育っているわけです。大人になる必要条件ですよね。
環境がおかしくなると、人間も生物ですから影響を受けるでしょう。狂い咲きや早咲き、立ち枯れ・・・成長過程の子どもたちには異常なものは遠ざけて過したいものですね。

映画「休暇」・・・(読み取るグレード)

今回は、ローカルな話でまことにすみません。
オール山梨ロケの映画「休暇」を観ました。主役の死刑囚が西島秀俊、刑務所の看守が小林薫、連れ子で小林と結婚する妻の役が大塚寧々というキャスト。映画の内容は、死刑執行の介助をする代わりに休暇をもらうという暗く重たいものである。甲府近辺の見知った風景が映画の中に出てくるというので観に行ったのだが、バックに出てくるロケ地があまり記憶に残らない。映画のテーマがあまりに重たすぎたからだ。
この映画を見た人が山梨では多く、後で何人かと感想を話し合うことができた。
あるおばさんは「新婚旅行で刑務官の親子が泊まったのは下部温泉だよね。・・・。県庁の旧館の大理石の階段もあったじゃんね。」こういう人とは深く話せない。「そうですね。」である。
次の人は、こう言う。「西島秀俊が死刑囚だなんてショック! 絞首刑って残酷よね。刑務官って、ああいうことしてるんですね。」・・・これもまた、多く語れない。「いや、ほんとに怖い話ですね。」である。
話が弾んだのは、「死刑を介助する代わりに休暇をもらう意味が深かったですね。」と言った人だった。私もそう思っていた。どういう罪を犯して死刑になったのかはハッキリと描かれていない。ただ、死刑囚の部屋に父母とおぼしき「霊」が立っている場面があった。犯罪は、ひょっとすると「親殺し」だったのかもしれない。
刑務官が結婚した女性には男の子の連れ子がいる。刑務官は、この成さぬ仲の子どもとうまくやっていかなければならないわけである。
つまり、子どもとちゃんと向き合わなければ、いつか死刑囚の犯した罪と同じもの・・・つまり「子どもが親を殺すかもしれない」ということが暗示されているのである。だから、死刑の介助をする代わりに休暇をもらって連れ子の子どもと「共有の時間を持とう」というものだ。
そこでは、現代の厳しい親子関係が浮かび上がっている。子どもに向き合っていないとそのシッペ返しが来るかもしれませんよ・・・・」と、までは言っていないが・・・監督は、それを言いたいのかもしれない。。
映画を観たあと、幾人かの人と内容について話をするのはおもしろい。見て取った後のその人のグレードが分かるし、自分自身の見て取るレベルも確かめられる。以前、「タイタニック」を観て、ある人は「海に投げ出されたドーソンが沈んで行く場面で涙した」と言った。「楽士たちが、逃げるのを諦めて賛美歌を演奏し始めた場面で泣いた」という人もいた。感じ取るところが違うのである。
これは、本を読んだ後でも同じである。どのくらい深く読めるか。何を感じとれるか。これも読み手の「読むグレード」によって決まる。「『ハリーポッター』が最高のファンタジーだ」という人もいれば、「やはり、『指輪物語』でしょう」という人もいる。作家のメッセージやテーマをどのグレードで受け取るか・・・読む人の読み取るグレードで本の評価も変わる。


(ニュース一部閲覧2008年5月号)
ページトップへ