ブッククラブニュース
平成25年5月号(発達年齢ブッククラブ)

キラキラネーム

 亜人夢、瑠美衣、羅偉我…。むずかしい漢語? それともロックバンドの名? 読み方は、アトム、ルビイ、ライガ。いずれも子どもに付けた名だ。ブッククラブにはこういった名前の子どもは皆無だが、日本全国で見ればけっこういるらしい。「キラキラネーム」と言い、社会学者の中に不快に感じる人が多いせいか「DQN(ドキュン)ネーム」とも呼ばれている。
 こういう漢字当ては、暴走族あがりの親が自分の子に付けるだけかと思ったが、どうもそうではないらしい。
 子どもの名は、1990年代から難読化が進み、現在では「この漢字をこうは読めない!」というくらいの当て字が出現している。上に挙げた名前など逆に読める方の部類だ。なぜ、こういう傾向が出て来たかと言うと、教育で個性が強調された結果、「自分の子が個性的になってもらいたい」という願いが強くなったからだ。「自己満足」「教養不足」などと批判もあるが、日本は「何をしてもいい社会」なので、この傾向に歯止めをかけるのはムリだろう。私は個人的には「地名と人名は読めなくてもしかたがない」と思っている人間なので、ある意味、「どうぞ、ご勝手に!」である。私の子どもでも孫でもないし・・・。

地名・人名は読めなくても・・・

 甲府の次の駅は「金手」だが、これを「かねんて」と読める人は県外にはほとんどいない。必殺仕事人の「中村主水」は「なかむらモンド」と読むが、これだって難読名だ。
 さらに信仰心などほとんどない若い世代でも子どもに名前をつけるとなると妙に画数にこだわる。当然、幸福な人間になってもらいたいと思うから、画数尊重→読み方無視という結果になる。以前、「騎士」と書いて「ナイト」と読ませる名に驚いたが、いまや「最大」と書いて「マックス」と呼ぶ名も出てきた。英語と日本語の融合・・・まことにグローバルな時代の現象である。
 ドQんネームの増加はここ二十数年だが、虐待の増加と比例しているという指摘もあるくらいだから、やはり、ある程度、親の社会意識の変化と関係はあるのだろう。こういう名付けは親の生活階層とも関係が深いと言われている。

とはいえ・・・

 当て字が読めないくらいならいいが、アニメの主人公とかキャラクターの名のような乱暴極まりない名付けも増えている。「自分の子どもをおもちゃにしているのではないか」と思うような名もある。かつて「悪魔」と名付けて市役所が受け付けなかった名もあったが、「天国」(エデン)、「聖王子」(ポプリ)・・・こんな名がつけば、学校で自分の名前が呼ばれるのを嫌がる子も出て来るはずだ。大人になったとき、セレモニーなどで名前を呼ばれて、周囲の人に笑われたら傷つくはずだから、やはりふつうのレベルの名にしたほうが子どもためというものだ。変わった名前を付けることは個性を重視する新しい風潮かもしれないが、まだ何も感じない赤ん坊に「問題のある名前を付ける」のは、親の身勝手・・・というより虐待に近い。
 それにしてもサブカルチャーの影響は大きい。だんだん,異常なものが異常でなくなって、真っ当なものが消えていく時代になったのかもしれない。「何が真っ当かわからない!」と質問してくる大人もいるくらいだ。
 新聞を読んでいても「???」というものがものすごく多い。時代は、同じ流れで動くので同じような現象が起きるとは言うが、それにしても異常なこと、異常なものがまかり通る世の中になった。名付けのデタラメさと同じくらいの社会現象も起きている。
 「原発建設計画が、福島第一原発の放射能汚染でダメになったので、東北電力が東電に賠償請求」・・・?? わからない! 「高校の女性教諭が借金を返すために風俗店で働く」・・・?? わからない! 「原発の過酷事故を経験した日本だからこそ安全性を高めた原子力設備を海外に輸出できる」・・・?? わからない! たしかに、日本は何をしてもいい社会になったことはわかる。と、言うより人が壊れてきたのかも・・・。そのうち、こういう原子炉には、「亜人夢1号」とか「羅偉我2号」なんて名前が付き、風俗店で働く先生は、「瑠美衣さん」と呼ばれるようになるのかもしれない。まったく、凄い時代になったものだと思う。(ニュース5月号一部閲覧)

47都道府県の唄

 ほとんどテレビを見る暇がないので、仕事中は音楽CDをかけたり、ラジオを聴いたりしている。ある夜、ラジオを聴いていると、おもしろい歌が流れてきた。「47都道府県の唄」というもので、各都道府県での日本一のものが軽妙な調子で歌われていくものである。カモンタツオさんという歌手が歌っていた。
 たとえば、こんな歌詞が並ぶ。・・・「宮城県はイカの塩辛の生産量が日本一」とか「福島県は日本で一番納豆を食べる」とか「福井県はメガネのフレームの生産量日本一」などのフレーズが次から次へと47回歌われる。
 これによると「♪・・・青森県は日本で一番テレビを見る」らしい。なるほど雪深いから冬はすることがないのかも。
 「♪・・・島根県は日本で一番老人ホームが多い」。山梨もそうだが、過疎県では高齢化がどんどん進んでいるんだなぁ!と思う。町を歩けば、行きかうのは老人ばかり。そういう私も老人。島根も同じなのか。
 「♪・・・熊本県は日本で一番献血をする」これは、スゴい。さすが火の国! 熱血漢が多いのだろうねぇ。
 「♪・・・沖縄県は日本一離婚率が高い」・・・これ!わかるような気がする。何事にもおおらかな人たちだからこだわらない。

日本一は山ほどあるが、

 「♪・・・山口県は都会に出た子に日本で一番仕送りをする」たしかに! 総理大臣を日本一出している県だから、親が子どもの出世に力を注ぐ率が高いわけだ。その割には日本の政治は少しもよくならないが・・・。
 「♪・・・長野県は博物館の数が日本一」・・・なるほど、行くと必ず美術館や博物館に入っている。時々ゆめやのニュースでも紹介するが、絵本美術館も多い。
で、私が一番気になるのは地元の山梨県だ。・・・聴いていると、予想に反して意外や意外、「♪・・・山梨の子どもは日本で一番、習い事をする」と来た。47都道府県中、子どもが主語になっているのは山梨県だけだった。これで、山梨の子どもが忙しいのはわかったような気がする。塾はどこの県の子も行っているのだろうから、それ以外の習い事もたくさんやっているのだろうね。
 先日、そんな場面に出くわした。夕方、散歩をしていたら、ある家からお母さんの大声と娘の泣き声。「もしや虐待?」と思って立ち止まると、「練習はするよぉー。でも今はやりたくなーい!」という子どもの声がして、「ああ虐待じゃなかった」と一安心。
 ピアノを叩く音も聞こえてきたから練習が嫌になった子が親の命令に文句を言ったのだろう。この程度の反抗は誰でもするからふつうのことだが、その子の声の後も母親らしき声は大声でいろいろ叱っていた。それを聞きながら、『子どもを放任するのも虐待だが、スポーツでも英語でもピアノでも親の期待が過剰だと虐待も起こりうるな』と思った。
 また少し歩いて、コンビニの前に行くと、低学年の男の子が三人、ベタっと駐車場わきに座って無言でゲーム機を操っていた。こういうのを見ると生活格差が大きくなっている感じがする。夕方、親が帰って来なくて居場所のない子も出ているのかもしれない。ピアノで泣いている子の格差が上か、無言のゲーム機の子のほうが下かはわからない。ただ、その格差が「英単語(単語ね!)を2歳でしゃべる」とか「3歳でピアノが弾ける」とか「4歳で文を書く」とかで測られたらおかしい。子どもの幸せは、「問題の少ない家庭、家族関係が安定していて、ゆっくりと成長できる環境があることだ」と思うからだ。これは子どもだけではなく、大人もそうである。時間に追いかけられていては、いくらお金があっても哀しい生活である。もう少し、能力や成績の差ではなく幸福度のようなもので格差を測れないものだろうか。  数日後、奈良県出身の会員に「♪・・・奈良県の家庭は日本で一番ピアノを持っているそうですね。」と話すと、「たしかに、私の家にもピアノがあるくらいですから・・・」という答えが戻ってきた。
 「47都道府県の唄」・・・歌詞には解説や分析の言葉はないが、意外に事の真実を突いているのかもしれない。(新聞5月号一部閲覧)



(2013年5月号ニュース・新聞本文一部閲覧)

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