ブッククラブニュース
平成28年11月号(発達年齢ブッククラブ)

なにもできない日々

 風が立って、甲府も11月初めは、さわやかな季節になりました。高原や湖に行く人々たちをみかけます。紅葉は例年のように中・下旬でしょうが、一年で一番いいシーズンですね。
 ところがですね。私は、同じ「カゼ」でも「風邪」をこじらせて、とんでもない状態になっていて仕事どころではないのですから大変。
 夏休みの号で「なにもしない一日」なんて文を書きましたら、いきなり天から「そう言うおまえもなにもしない日を持たないと口先だけになるぞ!」と 何と!45日もなにもしない日をもらいました。やはり無理がたたると人間も機械も壊れます。老朽化して壊れたものをなおすのは大変です。おかげでなにもできない日が一ヵ月半も・・・天は理屈を通したのでしょうが、いきなり「なにもできない日々」をもらった私は大変でした。

ニュースの発行遅れます

 で、弁解になりますが、今月号のニュースが遅れます。36年間続けて出してきたニュースが出せない。まあねぇ、うちの新聞は長たらしくて、みなさんにはあまり関心の持てないような話題ばかりですから、読んでいない人のほうが多いでしょうが、新聞というものは休めません。白紙で出すわけにもいきません。
 そこで今回は、とある有名な小説家のように私の口述筆記を娘にパソコンで打ってもらいました。ミス内容もあるかもしれません。それはまた次の号で訂正します。考えてみればいつもいうように「ゆめやのおじさん」は、もうかなり前から「ゆめやのおじいさん」です。半月もパソコンが打てないのですから全てがとどこおります。幸い発送担当のゆめやのおばあちゃんは元気ですから11月の配本はできます。まったく夫婦二人の零細企業。何かが狂うと動かなくなり、よくまあ、なにもなく36年動いたこと!「どこかでメンテナンスしないと大変なことになるよ!」と天も怒ったのかも知れません。いろんなものにさからうゆめやのおじいさんですが、天にだけはさからえません。しかたないのでメンテナンスします。

歳を取るとボケる?

 選書感覚や対応がふるぼけないように、ずっとがんばっています。最近は30年前に赤ちゃんだったお子さんが、そのお子さんをブッククラブに入れるという例が増えてきました。
世代も時代もちがいますが。名作でも古ぼけていく本もあれば生き残れる本もある。新作のほとんどは質の低いものばかりですが中には、光るものもある。いくら、良い本でも子どもの成長にうまくあったものでないと本は効力を出しません。上っ面だけをなでて通り過ぎてしまいます。
 だから、これからも選書は大切にしたいので、このへんでちょっと立ち止まり、チャージして、今までの働き方を変えてみようと思います。しかし、10月からの振り替え通信の返信などはだいぶ遅れてしまいますし、お手紙、お便りのお返事も年内いっぱいの返信になるかもしれません。ご理解とご協力をお願い申し上げます。12月には私の周囲の規制委員たちの承認をもらって再稼動します。
 再爆発しないように、また周囲に迷惑なものをまき散らさないらさないように注意しながら・・・・。(ニュース11月号一部閲覧)

ただいま充電中

 父が入院中で記事が書けないので、今月の新聞は次女の私がピンチヒッターで書かせていただきます。何を書こうか迷いましたが、父のことを書くよりないと思いましたのです。少し昔の新聞記事を引っ張りました。少し昔と言っても私が生まれた翌年で、この記事のことはまったく知りませんでした。以下のものです。

 昭和五十七年に、「ゆめや」のことが書かれた毎日新聞の記事を発見した。ゆめやが開業して二年後の記事である。そこには、三十代半ばの父の写真も載っていて、こんなふうに書いてあった。
 「長谷川さんは、父親が幼い時よく絵本を買い与えてくれた影響で絵本が好きとなり、絵本を売る店を持つのが夢だった。長谷川さんは三十余年前、父からもらった『ノアの箱舟』の絵本を今でも持っている。もうすっかり色あせてしまった絵本だが、当時三、四歳の長谷川さんがこれを読みながらどんなイメージをふくらませたことか。絵本が子供に与えるであろう空想世界を長谷川さんはすでに幼い時から体験している。(中略)
 年々大型化、スーパー化する書店の中での絵本専門店は、地方都市ではとても大量に売れそうもなく、採算もあわないようだ。生活費は長谷川さんが子供の勉強を教えるアルバイトで稼ぎ出す。長谷川さんの夢を実現させた絵本屋は今のところ、とても生業にはならない。子供たちに夢を与えたいという長谷川さんが生活のために行っている、子供たちから夢を奪うに違いない「学習指導」。同時に行っている長谷川さんの二つの仕事のこうした矛盾に長谷川さんは思わず苦笑する。
 長谷川さんは、月一回「絵本の会」を同店で開き若い母親たちに良書を紹介している。(中略)こうしたことは店の売上ばかりを目的にしたものではない。「ゆめや」は何より、書籍文化の拠点ではなくてはならない、というのが長谷川さんの譲れない鉄則だ。
 「時に空想力は現実的な力より強い」という、地方の都市のちっぽけな本屋のご主人は夢を語ると熱っぽくなる。(1982年12月10日 毎日新聞より抜粋)

まずは何より相手がいて

 こういう新聞記事を読んで、次女の私は、こんなふうに考えてみた。
 「本を媒体に子供たちのイマジネーションを育てたい。想像力をもって人間性の崩壊に歯止めをかけたい」という父の理念は、いまも変わっていない。それがよくわかる記事だと感じた。しかし、それよりも、私は当時の新聞記者が、ひじょうにうまく父の性格をとらえたおもしろい文章だと思ったのだ。きれいな言葉でまとめたり、ただ相手が口述したことを書くというだけでなく、そこには、父と対談している記者の姿も見えるようだ。だから「おもしろい」と思う。最近、新聞を読んでも日記のような感じで薄っぺらな記事ばかり。記憶に残らない。それは、そこに記事を書いている「人」が見えないからではないだろうか。
 また、ゆめやが地域文化の拠点というと大げさなような気もするが、開店と当時に行っていた「学習指導」では、父が子どもたちに絵本や勉強とは関係のない話をして、盛り上がっているのも見たこともある。また、「絵本の会」は終了してしまったが、その後も、「NPO子ども図書館」の講義や「おはなし会」など人との交流をいまでもつづけており、ゆめやは「サロン」のような感じにもなっている。こういった人との交流も私たちの人間形成に欠かせないものなのだろう。
 さてさて、父である「ゆめやのおじいさん」は、来年、古希を迎えます。人は七十歳にして心の欲するままに行動しても道理をはずれることはないといいます。これからもわが道を突き進むのでしょう・・・ね。今月は休養というより、充電期間でしょう。働き方は変わりますが、熱い熱〜い思いは変わらないので、どうぞ、今後ともよろしくお願いします。 (新聞11月号・・・文責 次女の私)

働き方を変えて

 と、いうことで12月からは働き方を変えることになりました。考えてみれば36年間、何一つやり方を変えずにやってきましたが、世の中は激変しています。変えないでやってきたことのほうが異常なのかもしれません。
 私は本屋は基本的に「配達」をするものだと思っていました。30年以上前から配達をしていますが、当時は毎月、絵本をバイクで配本して回りました。もちろん、お母さん方が在宅していて、いろんな話ができたり、暑い時、寒い時はお茶をごちそうになったり、お子さんの変化が見て取れたり、それはそれで深い交流ができたものです。当時のお客さんたちとはかなり多く、いまだにお付き合いがあるのも、そんな「交流」のせいでしょう。
 やはり人は接して話して、人間関係が深まるのだと思います。かつては、それが当たり前でした。しかし、時代の変化・・・スーパーやコンビニ、ケータイやスマホが人間関係を分断する社会をつくってしまったわけです。
 現在、どの家に配達に行っても留守です。親も子どももまずいません。幼稚園生、小学生ならともかく乳児のいる家庭でも留守です。たまに出会っても挨拶くらい。コンビニで育った世代が親になっているわけですから、そんなもんでしょう。
 こういう状態で、配達をする必要があるのだろうか?と思います。バイクによる配達は配達料はなんと年間600円です。36年前から値上げしていません。つまり毎月50円で、20kmかなたの家にも配達してきたのですが、いまやハガキの値段より低くなってしまいました。いま3500円のうな重でさえひとつでは出前をしてくれませんが、ゆめやでは1000円の本でも届けてきたのです。事故の危険性も高まってきています。かなりリスクがある上に、どこに届けても「留守」では配達する意味がないということになります。遠方から来店で受け取りに来ている方々のことを考えれば、近くなのに受け取りに来ることをしないというのは「虫がいい」ということになってしまいます。で、全面的に配達を縮小して、近日中にはゼロにしたいと思っています。
 また、これも同じ時代変化ですが、私は店舗営業は週休は一日でいいと考えていました。ゆめやが悪いのではなく時代がそういう状況をつくってしまった・・・ゆめやは、時代遅れでそれにすぐ対応しなかったということでしょうか。
 一億総活躍で、ウイークディの来店客も激減しています。そのかわり土曜日はものすごく来店客が多くなります。店では必ずお茶出しをしますので、立て込むとほんとうに大変で、ゆっくり話もできない状態になります。お茶を出すのは会話をするためですが、その会話さえなかなかできないで、お帰りになってしまう方もけっこういます。ならばウイークディを一日くらい休みにしてもいいだろうと12月からは日曜、月曜を連休にします。営業時間もウイークディ、冬季などは短縮します。
 とにかく時代は変わりました。こちらがガンコにやってきても、それが効を奏さないこともあります。通用しないなら変えることでなんとか通用させるよりありません。やむなく変えます。詳細はニュースで。

朝日新聞全国版に

 12月6日の朝日新聞全国版の専門店が紹介するクリスマス絵本(JPIC主催)のトップ高学年の部でゆめやの推薦する「急行北極号」オールズバーグ作、村上春樹訳、あすなろ書房)が掲載されました。
 私は、この本が発刊したときから好きでした。最初は河出書房新社から出たのですが、売れ行きが悪かったのでしょうか。すぐに絶版になり、以後、あすなろ書房から出ています。
 ブッククラブでは小学校4年から配本していますが、この本はさすがにオールズバーグだけあって深いのです。単純な夢の国のサンタクロースの話ではありません。
 最後にサンタクロースからもらった銀の鈴の音が「ぼく」には大人になっても聞こえるのに、妹のサラには聞こえなくなっている・・・なるほど現実的に生きていると深い意味でほんとうのプレゼントがやってこなくなる・・・やはり想像力は現実を超える強さがあるのです。この本は実に哲学的です。そんなわけで、投稿したら朝日新聞全国版に載ってしまいました。鼻高々ではありませんが、一人でも多くの人が、この本を読んで、このテーマについて考えてくれたらいいな、と思っています。



(2016年11月号ニュース・新聞本文一部閲覧)

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